Hermes Agentが塗り替える、AIエージェントが「自分で賢くなる」時代へ

3行まとめ

  • Nous Researchが開発したオープンソースエージェント「Hermes Agent」が、約2ヶ月でGitHubスター6万超を集め急速に注目を集めている
  • 最大の特徴は「学習ループ」――タスクを実行するたびにスキルを自動生成・改善し、使うほど賢くなる仕組みを持つ
  • 既存の有力OSS「OpenClaw」との思想的な違いを理解することが、エージェント選定の核心になる

すべてのAIエージェントが抱えていた「忘れる問題」

AIエージェントを日常的に使っていると、必ず壁にぶつかる瞬間がある。

「先週やった手順、もう一度説明してください」――毎回、ゼロから始まるセッション。プロンプトを調整し、手順を教え直し、前回うまくいったやり方を再現しようとする。これが、現在の多くのAIエージェントの実態だ。

記憶はある。チャット履歴は保存される。しかし「何がうまくいったか」という手順の記憶は残らない。情報を覚えることと、ワークフローを学習することは、まったく別の問題だ。

Hermes Agentは、この「忘れる問題」に正面から挑んだ。


Hermes Agentとは何か

Hermes Agentは、AI研究機関Nous Researchが開発したオープンソースの自律型エージェントだ。2026年2月に登場し、4月時点でGitHubスターは6万を超えた。MITライセンス、自己ホスト型、モデル非依存(OpenRouter経由で200以上のモデルに対応)という構成は、既存のOSSエージェントと大きく変わらない。

異なるのは、内部に持つ「学習ループ」の存在だ。

タスクを完了するたびに、Hermesは実行した手順を分析し、再利用可能なスキルドキュメントをMarkdown形式で自動生成する。次に似たタスクが来たとき、エージェントはそのスキルを参照して実行する。スキルはさらに改善され、蓄積されていく。

これはRAG(検索拡張生成)とは異なる。RAGが「何を知っているか」を蓄積するのに対し、Hermesの学習ループは「どうやるか」という手続き的な記憶を積み上げる。使えば使うほど、特定のユーザーの仕事のやり方に最適化されていくという設計だ。

初期状態でも40以上のスキルが同梱されており、MLOps、GitHubワークフロー、リサーチ、生産性タスクなどがカバーされている。


OpenClawとの本質的な違い

現在、自己ホスト型AIエージェントの二大勢力は Hermes Agent と OpenClaw だ。どちらもオープンソース、どちらも永続記憶、どちらもマルチチャネル対応(Telegram、Discord、Slackなど)と、表面上は似通っている。

しかし設計思想はまったく違う。

OpenClawはゲートウェイ・ファーストの設計だ。複数のメッセージングプラットフォームをひとつのゲートウェイでまとめ、チームや組織が複数チャネルから一貫したアシスタントを利用できることを優先している。スキルは主にコミュニティが作成・配布するものを活用する。成熟したエコシステム(コミュニティスキル4万4,000以上)は、OpenClawの最大の強みだ。

Hermesはエージェント・ファーストだ。ゲートウェイはあるが、それはあくまで補助機能。中心にあるのは「自己改善するエージェント」という概念そのものであり、スキルは人間が書くのではなく、エージェント自身が経験から生成する。

端的に言えば、OpenClawは「幅広い統合」を、Hermesは「時間をかけた深化」を選んだ。


使う人の視点から

Hermesが特に力を発揮するのは、繰り返しの構造を持つ業務だ。

たとえば、毎週同じフォーマットでリサーチレポートを作成する作業。最初の数回はHermesが試行錯誤しながら実行するが、そのプロセスがスキルとして蓄積されると、以降の実行は精度も速度も向上する。コンテンツ制作、競合調査、コードレビュー、データ収集パイプラインといった分野は特に恩恵を受けやすい。

一方、Hermesは初期設定の複雑さでOpenClawに劣る。環境変数ファイルが30項目以上になることもあり、「まず動かす」フェーズに時間がかかる。エコシステムも2ヶ月の歴史しかなく、OpenClawの成熟度とは差がある。

最新のv0.9.0(2026年4月13日)では、Android(Termux)対応、iMessage・WeChat連携、ローカルWebダッシュボードの追加が行われ、環境の整備が急速に進んでいる。


この先に見えるもの

Hermesの登場が示しているのは、エージェント設計における哲学の転換だ。

「何ができるか」の幅を増やすことではなく、「使い続けることで何が変わるか」に価値を置く。スキルを自動最適化する別リポジトリ(hermes-agent-self-evolution)ではDSPyとGEPAを組み合わせたRLベースの自動改善が動いており、人間が介在せずともエージェント自身がプロンプトやコードを進化させる方向が模索されている。

AIエージェントはこれまで「道具」として扱われてきた。Hermesが問うているのは、それが「育てるもの」になるかどうかだ。


公式Nous Research: https://hermes-agent.nousresearch.com/

Hermes Agent Github repository: https://github.com/NousResearch/hermes-agent

参考:Nous Research GitHub(2026年4月)、NousResearch/hermes-agent リリースノート v0.9.0、awesome-hermes-agent(GitHub)、screenshotone.com「Hermes Agent vs OpenClaw」(2026年4月)

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